次世代をつくるバーテンダーと
「ネグローニ」

永峯 侑弥 さん
The SG Club

チャレンジできる場所

1階が「Guzzle」というカジュアルなバー、B1階が「Sip」というクラシックでより独創的なカクテルを提供するバー、2階が葉巻を楽しめる「Savor」という会員制シガーバーになっています。
各フロア、メニューも違いますし雰囲気も違います。
「Sip & Guzzle」というコンセプトで、いろいろな飲み方の提案をしているのが「The SG Club」です。

The SG Clubのヘッドバーテンダーを務めつつ、SGグループ全体のドリンクを統括するビバレッジディレクターとしても活動しています。
日本、上海、それから今度はアメリカで新しいプロジェクトがはじまりますので、すべての拠点でのクオリティチェックやドリンク開発を日々行っています。

バーテンダーになってから14年目ですが、元々は自衛隊で看護師をしていました。
規律正しい生活を送る中で、もっと自分らしく表現できるフィールドがあるんじゃないかと考えるようになって。

そこでふと思ったのが「自分のお店を持ちたい」ということでした。
イタリアンでも居酒屋でもよかったのですが、辿り着いたのがバーテンダーだったんです。
お酒が好きだったということもあるんですけど。

それから約6年ほど西麻布のバーで働いて独立を考えはじめたタイミングで、後閑(SGグループ 代表)から誘いを受けたんです。
話を聞くうちにいろんな表現ができて、おもしろいことをやれそうな場所だと思うようになって入社を決めました。
自分のお店を持つのは50歳になってからでもできるだろうし、いましかできないチャレンジをしてみようと。

お客様を想うカクテルづくり

ネグローニって、ハーブとスパイス、甘さと苦さのバランスがうまく取れたいいドリンクだなと思います。
度数もしっかりあってカクテルとして完成されているし、でもアレンジもしやすい。
いろんなバーへ行きますが、ネグローニのツイストはメニューに載っていることが多いです。

でも日本人には、その度数や苦さが馴染みにくいとも思っています。

あとでご説明する、僕がつくったオリジナルネグローニは一般的なネグローニよりも度数を少し下げています。
度数を下げると厚みがなくなってしまうという部分に対しては、いろんなフレーバーを重ねて飲みごたえを上げています。
「強い、苦い」という印象ではなくて、さまざまなおもしろさを感じていただける1杯になっています。

育ってきた環境がみんな違うので、味覚についての得意不得意は必ずあると思います。
だから僕たちバーテンダーがアレンジしたりしてうまくエスコートしてあげる方がいい。
ソムリエさんじゃないですけど、味わいをしっかりプレゼンテーションすることも大切です。

その苦さをどう捉えていただくのか、その甘さをどう捉えていただくのか、工夫とコミュニケーションで、お客様はもっとカクテルを楽しめます。
これこそバーテンダーの仕事ですよね。

日本酒と泡盛を合わせたネグローニ

僕のオリジナルネグローニは、カンパリに黒いちじくと黒ごまを漬け込んだものに、日本酒と泡盛を合わせています。
度数のイメージとしてはシェリーくらいでしょうか。

日本酒は、岩手県の「民宿とおの」さんの米ぬかを燻製してつくった地酒なんですが、スモーキーな香りと少し鰹節のような出汁感もあって。
それがネグローニにふくよかさを与えています。
泡盛は少しきのこっぽい甘い香りとナッツっぽい香りをリンクさせたくて使っています。

カンパリにいちごなどのフルーツ合わせたりするカクテルは多いんですけど、黒いちじくの独特の酸味がいいなと思って。
カンパリのシトラス感とも相性がいいです。

スモーキーで香ばしいネグロー二なので、食後の葉巻とぜひ合わせほしいです。
度数を抑えているので、ネグローニをまだ飲んだことない人たちにぜひ飲んでいただきたい。
このネグローニから入って好きなカクテルを見つけていく、そんなきっかけになってほしいですね。

カンパリの汎用性

ネグローニから少し外れてしまうんですけど、カンパリについてのおもしろいエピソードがあって。
僕はレストランが好きで、月に1回は三つ星とか二つ星のファインダイニングに行くんですよ。

その中で「カンテサンス」というフレンチレストランに通っているんですが、シェフの岸田さんはカンパリを料理に使うんです。
これがおもしろくて、例えば魚料理のソースにカンパリを合わせたりします。カンパリ、トマト、あとはピンクグレープフルーツのソースです。

食後のお口直しにスプモーニのグラニテが出てきたり、ルバーブのシャーベットにカンパリといちごのソースがかかっていたり。
すごいカンパリ使うなと思って印象的でしたね。
好きなんでしょうね。カンパリ。

一流シェフが料理のソースに使うくらいですので、改めてカンパリは食事との相性がいいんだなと思いました。

次世代をつくる

これからもカクテルはつくっていくのですが、それ以外のことにもトライしていきたいですね。

例えば、うちは次世代の教育にもすごく力を入れていて。
SGグループのアカデミーじゃないですけど、学校をつくるのもおもしろいんじゃないかなと思っています。

SGグループっていろいろなプロフェッショナルがいるんです。
コーヒーのスペシャリスト、お店作りのスペシャリスト、葉巻や靴磨きのスペシャリストもいます。
こういった得意領域を持つ人材を集めてプログラムを組むことで、お酒をつくるだけじゃないバーの可能性をいろいろと広げていけると思うんですよね。

そういう場って意外となかったりして、どうやって勉強していいかわからない子たちってすごく多いと思うんです。
バーをやろうと考えている人たちのきっかけになるような場だったり、バーテンダーがいろいろな意見を交換できるような場であってもいい。
そういう場所を、学校なのかどういう形になるかはわかりませんが、今後つくっていけたらおもしろいのかなと考えています。
自分がどんどんやっていくことももちろん大事なんですけど、次の世代が育たないと業界に未来はありません。
そういったことに貢献できれば。

カクテルをつくることに対しても、もっと追究していきたいです。
まだまだお酒って自分の中でよくわかっていなくて。
だから10年、20年、30年、お酒に対して真摯に向き合って常においしいものを求めていきたいですね。

ORIGINAL NEGRONI RECIPE
Negroni Negro

カンパリ(黒胡麻、黒無花果) 30ml
泡盛 20ml
Kokuto de Lequio 5ml
権化 PEAT 5ml

YUYA NAGAMINE | 永峯 侑弥

1986年7月10日生まれ。鹿児島県出身。
高校卒業と同時に海上自衛隊に入隊、衛生兵として23歳まで勤務。横須賀と西麻布のバーで働いた後、2019年にThe SG Clubに加わる。現在はSG GroupのExecutive Bartender を務める。

|The SG Club|
住所 東京都渋谷区神南1-7-8
営業時間 17:00~翌3:00
URL https://www.instagram.com/the_sg_club/
問い合わせ ☏050-3138-2618